「右前」or「左前」?きちんと覚えておきたい着物の襟合わせ | KIMONO NADESHIKO

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2017年11月4日

着物

「右前」or「左前」?きちんと覚えておきたい着物の襟合わせ

引用:photoAC

着物や浴衣を年に1回着るか着ないかという人は、着物を着るときにふと、「襟合わせは右前か左前、どっちだっけ?」と不安になることがありませんか?どちらを前にしても着心地は変わりませんが、間違った襟合わせをすると、とっても居心地が悪い思いをするかもしれません。正しい襟合わせの方法と、その由来をまとめてみました。襟合わせぐらい分かっているという人も、豆知識として読んでみてくださいね。

まずは覚えよう。正しい襟合わせは「右前」!

引用:楽天

「右前」と「左前」、どちらが正しい着物の襟合わせなのか?答えは「右前」です。

右前とは、右側の襟が下にきて、左側の襟が上にくる合わせ方です。他人から見れば「y」の字に見える重ね方です。”前”という表現にちょっと混乱してしまうかもしれませんが、ここでの”前”は、【時間が先=前】という意味で使われています。ですので、右側から先に重ねる=「右前」となるわけです。”前”と言われると重なり方の”前後”と思ってしまい、前に出ている(上に重なっている)襟が左だから、本当は「右前」に着付けているものを「左前」だと勘違いしてしまうこともあるかもしれません。実を言うと、恥ずかしながら私もかつて、着方は合っているのですが、”前”の捉え方が間違っており、前面に出ているのは左身頃だから、正しい着方は「左前」!と思い込んでおりました…。

着物を着付ける際には「上前」、「下前」という言葉が使われます。これが襟合わせの左右とゴッチャになって、私と同じような勘違いが起きがちなのですが、上前とは、着る時に外側にくる面のことで、振袖や訪問着であれば最も華やかな模様が施されている面にあたります。羽織った状態だと左手側にくる面です。反対に下前は内側にくる部分、右手側の重ねる順では下になる面のことを指します。正しく上前がくるように着付ければ、襟合わせは右前になるのです。

なぜ着物の襟合わせは右前なの?

引用:天平楽座

着物の襟合わせが右前と決まったのは、今から遡ること1300年、719年(養老3年)のことだと言われています。奈良時代、藤原不比等が活躍していた時代です。第44代元正天皇が出した「着物は右前で着る」という内容の法令に依るそうで、それまでは左右の決まりはなく、実際、右前、左前どちらの埴輪も出土しているようです。諸説ありますが、当時交流のあった中国 唐の着方に倣って、右前に着る決まりができ、それが定着したと考えられています。

左前はどうしてダメなの?その理由について

引用:はちドットビズ

では、左前はなぜいけないのでしょうか?昔からの習慣というのは分かりますが、着心地も変わりませんし、そんなに問題ないのでは?と思ってしまうかもしれません。ですが、実は大問題なのです。左前は経帷子という仏式の死装束の着付け方なのです。あの世とこの世は全てが真逆という風に考えられており、亡くなった人に着付ける際は、通常の右前とは反対の左前に着付ける習わしがあるのです。そのため左前に着付けると、早死にすると言われていたり、縁起が悪いとされています。せっかく綺麗に浴衣や着物を着たのに、死んだ人と同じは嫌ですよね。

万が一、お友達が左前で着てしまっているのを見つけたら、こっそり教えてあげてくださいね。

襟合わせに男女の違いはあるの?

引用:photoAC

普段洋服を着慣れている現代人からすると、男女で襟合わせは違ってくるのかな?と疑問に思うことがあるかもしれません。というのも、洋服では、男女で前合わせが逆になるからです。通常男性物は左側が上に重なり、女性物は右側が上にくる作りになっているのです。このことをご存知の方だと、着物の場合も男女で変わってくるのかもと思ってしまう訳なのです。ですが、着物は男女共通で、どちらも右前が正解です。

洋服の合わせが男女で違う由来は諸説あります。有力な説の一つが、自分で着ていたか、他人に着せてもらっていたかの違いによるものという説です。ボタンのついた衣服が登場した13世紀〜14世紀頃、ボタン服はお金持ちしか着ることのできない高価な品であり、当時上流階級の女性は、召使に服の着脱を手伝ってもらっていたため、召使にとってボタンの掛け外しがしやすいよう女性物は右が上に、男性は高貴な人でも自分で着替えていたため、自分で掛け外ししやすいよう左が上になっているというのです。男女ともに自分で着替えることが基本の現代では、どちらも不自由なく着脱出来ているので、要は慣れかなとも思いますが、なんとも合理的な由来です。他には19世紀にヨーロッパの洋服デザイナーが流行らせたという説もあるそうです。

正しい襟合わせで、気持ちよく着物を着よう!

由来や名称はともかくとして、とにかく間違わなければ良いのです。正しい襟合わせは「右前」です。覚え方は先に書いた通り、他人からみた時「y」に見える重ね方、右利きの人が多いという前提で、懐に手を入れやすい重ね方です。久しぶりに浴衣など着物を着る機会に、あれっ?となった時は思い出してくださいね。

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